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警察の対応が生む悲劇

   

このコラム内で以前触れた「桶川ストーカー殺人事件」。
昨年末、「増刊大衆」(双葉社)の「あの未解決事件」という北芝 健さんの連載内で
詳しく触れられていたので、今回はその連載内容を基にこのコラムを書き進めてみたい。
この「桶川ストーカー殺人事件」、社会にストーカーという言葉を広く認知させたのと同時に、
「ストーカー規制法」なるものまで施行させた凶悪事件だ。
だが、その一方で、警察の怠慢捜査や被害者が提出した「告訴状」を
「被害届」に改竄するなどの警察の違法行為が明るみに出た事件でもある。
殺害されてしまった被害者に対するその当時の埼玉県警上尾警察署の対応を
まず挙げてみよう。

 

■ 99年6月、Kら(K=ストーカー行為を繰り返していた被害者Sさんの元交際相手)が
自宅に押し掛けたときのテープを持って相談した際の対応

 

「ダメダメ、これは事件にならないよ。そんなにプレゼントもらっておいて
別れたいと言ったら、普通怒るよ、男は。
いい思いしたんじゃないの?
男と
女の問題に警察は立ち入れない」

 

■ 同年7月、中傷ポスターが貼り巡らされて、告訴したいと申し出たときの対応
(名誉毀損罪に当たるため、生活安全課から刑事二課へ回される)

 

「裁判になったら、時間もかかるし、
いろいろ嫌なことも話さなければいけない。辛い目に遭いますよ」

 

「へぇ、一浪したんだ。
いま試験中でしょ?試験が終わってから来たら?」

 

■ 同年8月、父親の会社に大量の手紙が送られてきたことを相談した際の対応

 

「(実際の封書を見て)ずいぶん、いい紙使ってますね。
カネかかってるなぁ。たいしたもんだ」

 

どれも随分とのんきな対応だ。
被害者をナメているにも程がある。
相手がまだ21歳の女子大生だからこのようなふざけた対応をしたのかと勘繰りたくなる。
そして最も許せないのが、これだ。

 

■ 同年10月26日、事件に関する上尾署の記者会見

 

「(まず冒頭で、)捜査一課長代理ですから、厳しい質問のないように
宜しくお願いします。ハハハ。」

 

「(被害者が刺された箇所を説明する際、記者団に尻を向け、)
ココですよ、ココ。(脇腹を叩く)フフフ」

 

「ハハハ」や「フフフ」ではない。
その当時、この一課長代理の頭の中はウジでもわいていたのか、
それとも違法薬物でも使用して頭の中がお花畑にでもなっていたのか。
そう思わざるを得ない言動だ。

以下、「増刊大衆」の記事を抜粋したい。

 

「人が殺されているにもかかわらず、笑顔の一課長代理。
しかし、ストーカーとの関連性を質問されると一変して表情を強張らせ、
わからないと繰り返した。
その一方、遺留品については、『バックはプラダ』『時計はグッチ』
『厚底ブーツにミニスカート』と、不要な情報を詳しく説明。
暗に”派手な女子大生”という印象を記者団に植えつけた。
さらに警察は、後日、彼女が水商売で働いていたと、事件と無関係の情報を
マスコミにリークする。
実は事件の1年ほど前、Sさんは友人のつき合いで2週間だけスナックでアルバイトをしていた。
だが、やはり無理だと、バイト代ももらわずに辞めている。
しかし、これらの情報により、テレビや雑誌は彼女のことを
”ブランド好き” “キャバクラ嬢” ”風俗嬢”などと書き立てた。
捜査本部が置かれた上尾署による犯人探しも、まったくの無気力捜査だった。
Kがストーカー殺人だったこともわかっており、実行犯の目撃証言もあるのに
なかなか動かない。
犯人を突き止めたのは、写真週刊誌『フォーカス』の記者だった。
彼は独自に聞き込みを重ねて情報を集め、実行犯と、その居場所を突き止めたのだ。
記者は、そのことを警察に伝えたが、それでも警察は捜査せず。
結局、フォーカス誌のスクープ記事が出たことで初めて警察は動き、
犯人の逮捕に至った。
なぜ、警察は逮捕に消極的だったのか————。
その背景にあったのが、告訴状の改竄という驚愕の事実だ。
Sさんは7月29日に告訴状を提出したが、警察は、それを”届出”と勝手に書き直していたのだ。
被害届への改竄を隠すために、警察は同年9月、Sさんに改めて被害届けを提出させたうえで、
告訴状の取り下げを要請している。
しかも、その際、告訴状は一度取り下げても、また簡単に再提出できると言っていた。
だが刑事訴訟法には、取り下げた告訴は再提出できないとの規定がある。
警察は噓をついてSさんに告訴の取り消しをさせようとしたのだ。
ちなみにSさんは、取り下げを拒否した」

 

それに対する北芝さんのコメントは、

 

「告訴は送検する義務があります。

 法律家相手の仕事になるので、書類作りも相当な手間です。

 一方、被害届にその義務はないので、

 所轄幹部の決裁や本部への報告義務もない。

 つまり、警察が無精を決め込んだんですよ。」

 

「これは虚偽有印公文書作成、明らかな違法行為です。
発覚したら一大事だから、自分たちの犯罪を隠すために、
迷宮入りにしようとしていたんじゃないか。
フォーカス誌のスクープがなかったらと思うと、実に恐ろしい。
もし、同様の問題で警察に相談することがあったら、
その際は弁護士を立てたほうがいいでしょう。
そうすれば、相手の出方もコロッと変わるはずです」

 

というものだったが、
どの記述も読んでいて言葉を失うものばかりだった。
ただ、ここまで読んでみてどうだろう。勘のいい方は何かに似ていると気づいているはず。
そう六本木事件もこのケースに似ているんだ。
大まかな見立 真一の居場所がわかっているにも関わらず、何のアクションも起こさない、
不自然なまでに早い捜査本部の縮小、これらは見立真一を現段階では積極的に
逮捕するつもりがないことの表れだ。
見立真一が今逮捕されれば、事前に共謀がなかったことが明らかになる為、
共謀共同正犯で俺を問うことが出来なくなる。
(また、見立真一の裁判を通じて、防犯カメラの映像などが明らかになる可能性が高い)
俺がそう言いきれてしまうのは、仮に見立真一が國田正春のように俺に対して、敵意を持ち、
事前に共謀があったと俺のことを巻き込もうとすれば、それは事件の計画性を見立真一自らが
立証してしまうことにもなり、同時に、自身の首を締めることにもなるからだ。
きっと警察・検察もそんなことは百も承知だろう。
なので、もし警察が見立逮捕に踏み出すとしたら、それは見立真一のコントロールが
利くようになる司法取引が認められるようになってからではないか。
(その時の内容としては俺の推測となるが、世間からの関心が高い六本木事件での
求刑を安く(低く)してしまうと検察が非難をあびることになるので、
そうした非難をかわす為にも何か表に出ていない別件がもしあれば、そちらを握るということで
揺さぶりをかけるのではないだろうか)
警察が不自然かつ合理的ではない行動をした時は、常に何か裏があるということを
このコラムの読者の方達には覚えておいてもらいたい。
そのように警察が頼りにならなかった時や塩対応された時、
また警察そのものが信用できなかった時、我々国民は一体誰を頼ればいいのか。
最近そんなことをよく考えるが、少なくとも警察がふざけた対応をした時は、
例え警察が相手でも強く、またしつこく訴えられる人や弁護士なんかと一緒に
もう一度相談に行くのが一番効果的だろう。
また他には、事情を説明した上で、警視庁経由から塩対応、怠慢捜査をする所轄の署の
ケツを叩くのもいいだろう。(そもそも警視庁自体にも問題はあるが)

最後に桶川ストーカー殺人事件に対する警察の責任・処分についての記述を「増刊大衆」から。

 

「報道で、警察の杜撰な捜査実態が明らかになると、
問題は国会でも追及され、県警は内部調査を実施。
ついに改竄の事実を認めた。そして00年4月、改竄に関わった3人の刑事は
懲戒免職となり、後に有罪判決も受けている」

 

それに対し、北芝さんは次のように指摘している。

 

「こんなのトカゲのしっぽ切りです。
所轄の幹部や県警の上層部は減給か戒告だけなのは、おかしいでしょ。
これは組織的な隠蔽工作ですよ。
それによって殺人まで起きているのに、
使用者責任が曖昧なものに終わった。
それこそが、この事件の未解決な部分なんです」

 

ごもっともだ。

 

「この事件の全貌を知ったとき、警察OBとして本当にガッカリしました。
慈愛のかけらもない。
それでいて事件が大ごとになったら、杜撰な処理を隠蔽・・・・・
この腐った根性はなんでしょう。
最初からきちんと対応していれば、悲劇は生まれなかった」

                          北芝 健
                          「増刊大衆」(双葉社)より抜粋