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三鷹ストーカー殺人事件の裁判・判決について思ったこと

   

「このコラムで、三鷹ストーカー殺人事件の裁判についての

石元さんの感想を書いてほしい」という少し代わった要望があったので、

今回はそのことについて書かせてもらいたいと思います。

 

「週刊実話」(日本ジャーナル出版)の4月7日号に、

この事件の差し戻し審に関する記事が載っており、

このようなことが書かれてありました。

 

「旧一審の際に『処罰目的の余罪考慮はしてはならない』と

裁判員に説明しなかった裁判官と検察の怠慢と言えます」

 

また、高裁で差し戻し判決が出た直後の読売新聞では、

越村 格さんがこのような記事を書かれています。

 

「この日の判決は、裁判員裁判における量刑判断が、

感情的な要素などに過度に左右されることへの裁判所側の

危機感を改めて示した。

高裁は、画像の投稿によって被害者の名誉が著しく

傷つけられたこの事件が、リベンジポルノへの国民の関心を

高めた点を指摘。

『投稿行為が過大に量刑に影響する恐れがあった』として、

投稿の影響などを調査した警察官の証人尋問などを認めた地裁の

裁判官の訴訟指揮を非難した。

裁判員裁判では、

『児童虐待には厳しい罰を科すことが社会情勢に適合する』として

求刑の1,5倍の懲役刑を言い渡す判決も出たが、

最高裁は昨年7月、この判決を破棄して刑を軽減した。

『起訴された犯罪の内容に見合った重さの刑』を重視している点は、

今回の判決も共通している。

 裁判員裁判で市民感覚を生かした量刑が求められるのは当然だが、

適切な判断材料が提供される必要がある。

今回の判決は、地裁の裁判官にそのことを再確認するよう

促す意味があると言える」

 

以上のことから、差し戻しの決定をした大島 隆明裁判長に対して、

「犯罪者の肩を持ちやがって」という見方をするのは少し短絡的なのではないかなと

自分は思います。確かに、被害者遺族の気持ちを考えれば、

高裁の判断はつらいものだったかもしれませんが、

例え大島裁判長がスルーしたとしても、どのみち最高裁でそのような問題点が

見逃されるとは考えづらく、同じように差し戻しの判断をされていた可能性は

高かったはずです。

となった場合は、余計に決着が長引くことになっていたと思うので、

早めに旧一審の訴訟指揮のミスを是正した高裁の判断は、

結局のところよかったのではないでしょうか。

ただ、自分はこの活動をしている限り、冷たい言い方かもしれませんが、

加害者側に寄り添う気持ちは全くありません。

恋人同士の思い出づくりやマンネリ化防止の為にそうした行為に及ぶことは個人の自由であり、

何も反対する気持ちはありませんが、関係が終わった後に

悪意を持って拡散させる行為はサイバー・ブリーであり、セカンドレイプです。

なので、この活動に参加している者として加害者である彼には厳罰を望みます。

 

これは余談になりますが、この事件の差し戻し判決時も高検の堺徹検事が

「予想外の判決に驚いている。適切に対処したい」

コメントを出したそうですが、そのことについては何度だって書かせてもらいます。

そのようなコメントを毎回出すようでは、あなたは検事として失格です。

「控訴趣意書」内で原田國男さんの「量刑判断の実際」(立花書房)からの

引用をしていたので、同じように原田さんの著書から自分も引用させていただきます。

どうか真摯に受け止めて下さい。

 

『第1審の場合、検察官も起訴した以上、有罪を確保するために一生懸命になり、

無罪方向の証拠の収集にとかく不熱心になりがちである。

そこで、2011年9月に最高検察庁が制定した検察基本規程においても、

積極証拠(有罪方向の証拠)の収集だけではなく、消極証拠(無罪方向の証拠)の

収集等に努めることがうたわれている。

控訴審の場合、検察官にも、検察が求めた第1審の事実認定が本当に正しいかについて、

批判的にみる余地ないし、余裕が生じているとみたい。

 とはいえ、今も無罪判決が出ると、次席検事が「予想外の判断で」と、

決まり文句のように新聞の取材に答える。

もちろん、プロとしては、予想しているはずである』

                                    原田 國男

 

                   「逆転無罪の事実認定」(頸草書房)より抜粋