裏切り続けた期待
今年の6月30日号と少し前になるが、冨田 真由さんが襲われた事件について
「週刊文春」が詳しく取り上げていたので、今回はその記事を抜粋したい。
「警察の対応は不十分だった。五月にシンガーソングライターの冨田 真由さん(20)が、
ファンの岩埼友宏容疑者(27)からライブ会場前でナイフで刺されて意識不明に陥り、
その後一命をとりとめた襲撃事件の検証結果を今月十七日、警視庁が公表した。
警視庁担当記者が語る。
『検証では、冨田さんが襲撃される十二日前の五月九日から
《ファンからのツイッターへの執拗な書き込みをやめさせてほしい》と
武蔵野警察署に相談していたのに、署が本部に告げなかったことを問題視。
ストーカー事案などを取り扱う専門部署《人身安全関連事案総合対策本部》に
《速報して被害者の安全を確保すべきだった》と結論づけました。
書き込みも《好意が悪意に変わった変化を読み取るべきだった》として一応は警察の不手際を
認めた格好です』
冨田さんはライブがあることも武蔵野署に事前に伝えていたが、
警察は臨場せず。事件当日には犯人を目の前にして一一○番通報したが、
通報を受けた通信指令本部は位置情報の確認を怠り見当違いの場所に警察官を
派遣する始末だった。冨田さんは最後まで警察に望みをかけ、
警察は最後まで期待を裏切り続けた。
『会見で言い訳に終始する幹部に記者が激高するなど、記者クラブ内では当初から
警察の対応が疑問視されていました。今回、不手際を認めたといっても、
《すぐにストーカーと判断するには難しかった》と弁解もしている。
検証期間の一ヶ月が、この結論を導くために費やされたかと思うと、やり切れません』(同前)
警視庁には苦い教訓があったはずだ。二〇一三年の三鷹市の女子高生ストーカー殺人事件。
あの惨劇を受けて設置したのが人身安全関連事案総合対策本部だった。
同本部では、ストーカーを扱う生活安全部に突発事件に臨場する機動捜査隊を加え、
一見小さな事案でも臨場や逮捕を積極的にして一定の成果をあげてきた。
警視庁OBは『三鷹と違い、制度上も事件を防ぐ手立ては整っていたはず。
それでも、こんな事件を許した警視庁は上から下までたるんでいるとしかいえない』と憤る。
仏作って魂入れず、という。
問われているのは、もはや制度ではない。警察官の魂だ。
なぜあのような事件が起こったのか、その問題点について改めて考えさせられる記事だ。
「好意が悪意に変わった変化を読み取るべきだった」
正にその通りだなとこの時期を読んでいて思った。
そこが出来るか出来ないかが、きっとプロ(警察)とアマの違いなのだろう。
警察だけを批判すればよいという問題ではないことは理解出来る。
しかし、今回の事件は事前に防ぐことが出来た事件。
同じ同じことが繰り返されないようにする為には、事件をしっかりと検証し、
問題点を挙げ、批判を続けることが必要な気がする。