「生きて出れると思わないで下さいね」

横浜刑務所に入所してからというもの、大小様々な犯罪の話を

耳にしてきたが、その中でも特に質が悪い犯罪だと

強い嫌悪感を抱いたのがある連続集団強姦事件だ。

それは単純な集団強姦事件ではなく、

被害女性に暴力を振るい、無理やり覚醒剤まで打ち込んで

事に及んでいたという非常に悪質な事件だった。

その人間とは俺が横浜刑務所に来てすぐの頃、

１ヶ月間ほど同じ工場で共に生活したことがあるのだが、

その人間は居室内で他の受刑者と口論になり、殴られ、

工場から移動となった為、

（刑務所では口論やケンカで一度調査となってしまうと、

例え被害者であっても同じ工場に戻れないケースが多い）

俺とは一言も話すことがなかった。

なので、俺がその人間の詳しいことを知ったのは、

それから大分後のことになる。

その人間と過去別の工場で一緒となり、

仲が良かったという受刑者が今同じ工場にいるのだが、

その受刑者が

「あの人、裁判所から『あなたの刑は無期懲役ですが、

生きて（刑務所から）出れると思わないで下さいね』

と言われたらしいですよ」

と話していた。

その裁判官がそういった言葉を口にした気持ちは

よく理解出来た。

その連続集団強姦事件を起こした人間は体がとても大きく、

その体に彫り物までしている。

そのような体躯の男達から集団で襲われた時の恐怖……。

一体どれほどのものだったことか……。

もし自分の親しい友人がそのような被害に遭ったらと考えると、

殺意に近いものが芽生えてくる。

俺は人を傷つけること、ケンカをすることに

何のためらいもないような男だが、

さすがにこういったことには強い嫌悪感を抱く。